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厨房で働いたことのないデザイナーが、厨房をデザインすると調理が出来ない厨房が出来てしまう。

この問題の原因を考えたときに、結論として纏まった例がこれです。これから、出来るだけ短くこの結論に至った理由を説明します。

見た目を重要視し過ぎるデザイナー

サイトを制作する上で見た目(ビジュアル)は重要です。しかし、見た目に深くこだわっていても、使い勝手(ユーザビリティ)が欠落していては利用者が逃げてしまいます。これは、ウェブ黎明期からヤコブ・ニールセン博士が言い続けていた事です。

紙や映像媒体で育ったデザイナーがウェブ業界に入ってきたことからこの問題が表面化してきたと言われているが、この傾向が一向に収まらないのは何故だろうか。

僕は最近、普段ウェブに関わっていないデザイナーとウェブ制作をする機会があって実感してきたのですが、どうやら彼らは、見た目の良さがユーザーに与える影響は、とても大きいと思っているようです。そして、それを向上させることがデザイナーの存在意義であると信じていることが、どうやら厄介な問題のようです。

なぜ厄介なのかと言うと、ユーザーが見た目の良いサイトに好感を寄せることは当然だからです。ですから、デザイナーがこれを重視するのは、ある意味通常の感覚なのですが、そういった彼ら多くのデザイナーの死角は、自分自身がウェブサイトを利用した経験が少ないということです。

これは、ニールセン博士が『ウェブ制作に携わる人の多くは、経験が豊富であり、多数派である毎日はウェブを利用しない一般ユーザーとかけ離れてきている。』という意見とは逆説的です。

僕はそういった経験の差よりも、広告デザイナーとしての通常の感覚(見た目が良い影響を与える)が、ウェブへの理解を遅らせて、この問題を長引かせている最大の原因だと感じたわけです。

つまり厨房で例えると

この問題を例えるならば、とても美しい内装を手掛けるデザイナーがいたとして、彼に新しいお店のデザインを一式頼んだところ、とても美しく機能性にも富んだ厨房が出来ました。

しかし、彼は多くの料理人が働く厨房で働いた経験がなく、その上、料理人の意見も聞かずにデザインしてしまいました。すると、どうなるか。

みなさんお分かりの通り、料理人が非常に調理のしにくい(つまり使えない)厨房が出来上がってしまったと言うわけです。

機能は十分なのに、使えない厨房を考えてみると、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • コンパクトに設計されているため、人が往来しにくい上、密集すると作業が出来ない。
  • 電気が必要な器具が密集しているため、同時に器具を使うとブレーカーが落ちてしまう。
  • ピッタリと器具が配置されているため、新たな器具を設置出来ない。

などが考えられるでしょう。実際にこれらはよくある話です。しかし、大規模チェーンの飲食店の厨房は違います。大半の店舗がとても作業がし易く出来ています。それは多くの経験を蓄積し、それらを型として、効率良く設計されているからです。その上で、見た目を考慮しているため、チェーンとして繁盛出来るのです。

つまり、厨房はオシャレの前に、厨房として機能するための条件を踏まえなければならないということです。

サイト設計の必要条件

ウェブにも同じことが言えるでしょう。大規模なサイトは大半のユーザーが正しく使うことができます。これは有名だからという訳ではなく、サイト設計に必要な最小限の条件を踏まえているからです。

このことについては、ニールセン博士が著書新ウェブ・ユーザビリティで調査結果と共に語っています。

どんな、ものづくりの現場においても、かならず外してはならない基本があります。つまり大事なのは、デザイナーは先ず、ウェブがウェブとして使えるための必要条件を守らなければならないという事です。そうでなければ、使えない厨房と同じで、使えないサイトになってしまうからです。

『多少使いにくいけど、見た目がカッコ良いから、注目を集めて、みんな使ってくれるよ。』という、よくありそうなデザイナーの意見は盲信です。自分がよく見るサイトがどんなサイトか思い返せば分かるでしょう。重要なのは内容とそれが見やすいか、なのです。

それでも見た目を良くするために

ウェブ制作に携わる者として、ユーザーの事を考えるのは当然です。しかし、ただ毎回考えるのでは時間の無駄です。そうではなく、ユーザーの心理と行動を経験として蓄積し、一定の型として利用することが大切だと思います。そして、そうすることで、作業効率も上がり、見た目の良さを追求する時間も多く取れます。

見た目を良くすることは重要です。しかし、使うための必要最小限の条件を守らなければ、使えない厨房のようになってしまうわけです。

使える条件を守りながら、見た目の良いサイトを作るデザイナーこそが、尊敬すべきデザイナーであり、それは思ったより難しくないのです。

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